2010年10月18日月曜日

モチベーションスタンダード

 理想のリーダー像として引き合いに出される「信長、家康、秀吉」の内、もっとも優れたリーダーは誰かと言うよくある質問は愚問と言えます。

 なぜなら、マネジメントとは、刻々と変化する状況に適切な手を打ち続けて目的を達成することだからです。つまり優れたリーダーにある一定のパーソナリティーを求めることはもともと困難なのです。ある時は信長的がよく、ある時には信長的がデメリットになるわけで、高い見地で機能する「客観性」「判断力」「統率力」に裏打ちされた指示と実行力がリーダーに欠かせない資質になります。

 では、どのようにすれば、そう言った資質は獲得できるのか、それが問題です。体験に勝ることはありませんが、限界があります。限界をカバーするのが、疑似体験で、もっとも手軽な読書など他者の経験です。しかしこれには注意が必要で、客観性を欠いた成功談は自慢話の域に留まってしまいます。

 ワタミグループの総帥、渡邊美樹氏は、ポーターの「競争優位の戦略」を100回以上読naまれたそうです。非常に難解で、なにを言いたいのか分からなかったために、100回以上読むことになったそうですが、ではなぜ途中で放り出さなかったのでしょうか?

 起業するにあたって、原理原則を書いた有名な”名著”であり、必ず読んでおくべき本であると情報を仕入れていたからでしょう。このエピソードから浮かび上がってくるのは、渡邊美樹氏自身が、「客観性」「判断力」「統率力」に裏打ちされた指示と実行力を身につけている姿ではないかと思うのです。

 理解できるまで、読み続けろと自らに指示して実行を促す統率力を自らに発揮していたことです。自らを適切にマネジメントする力は24時間をフルに活用して育むことができます。そうして育んだ自分へのマネジメント手法をスタンダード(基準)にして、チーム内に水平展開でシステム化すればいいのです。。

 「名選手、名監督にあらず」は、この失敗を表現したものですが、自分と他者は別の人格であるという「境界」の存在を正しく認識できなかったためで、自他尊重の基本的人権を掌握できなかったことに起因します。つまり個人に自分と同じマネジメント資質を求めすぎてしまうのです。これはチームの定義を間違えているからです。

 組織はチームワークで仕事をすすめるものなので、優れたチームとは個人の力の総和以上の力を発揮するものです。やる気という感情的なものでなく、モチベーションの動機づけの機が重要です。つまり意欲的になるタイミングを、人と人の間、人間関係に落とし込むことが欠かせないからです。

 それには、リーダーの思考と行動のスタンダード(基準)への共感からなる信頼性に他ならないことが浮かんでくるはずです。それを可能にするには「個人批判」に走らないことです。「名選手、名監督にあらず」の戒めは個人批判に走る傾向に向けられているのです。

 チームは人間関係であり、人間関係を正しく機能させるために、チームのひとりひとりが自分の責任をクリアできる技術が必要になります。逆はなく、その基準を作り、機能させる力が、リーダーのスタンダードになっている思考と行動基準です。

 たとえば顧客からクレームが生じたとします。クレームの主となった売り手と買い手、それぞれ個人に目を向けるのではなく、チームに張り巡らされたコミュニケーションに注目することが先決なのです。

 個人批判に傾くと自己防衛に走り、逆に個人批判を強めてしまい、チームの総和にダメージを与えてしまいます。これでは批判することが、マネジメントの疏外要因を作っているだけになってしまいます。

 リーダーの資質と、それを支えている思考と行動のスタンダードは、自他尊重という信念を通して、チームのコミュニケーションに反映していくものなのです。リーダーの基準をチームのコミュニケーションの基準にできるように、リーダーの基準をステップアップしていくことが重要です。

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